異文化との遭遇



象を選んだフォッグ氏。たいそうな金額を村人に払い、手に入れたのです。
 
パーシー人のガイドを雇い、9時に出発した彼らは、その鋼鉄のような背中に揺られて、
密林を抜け、荒野を走ります。
 
フォッグ氏は背中の輿のなかで(できる限り)静かに。

パスパルトゥーは首から尻まで跳ねまわされながら。
 
パスパルトゥーは正直、愉快でしたが、ただひとつの心配事は、
鉄道の駅に着いたときにご主人はこの象をどうするつもりなんだろう、
もし自分にくれる、とでもいわれたら一体どうしたらいいのだろうか・・・という事なのでした。
 
 
 
途中、壊れかけたバンガローで一夜を過ごし、次の日、深い森の中で彼らは不思議な一行に遭遇します。

ガイドは慌てて、フォッグ氏とパスパルトゥー、そして象を森の中に隠しました。

それはその地域の王を送る葬列でした。

その辺りはあまりにも辺境であるため、英国政府はなんの力も持っていないのでした。
大勢の僧や群衆がみたこともない奇妙な格好をして(英国人から見て、ですが)
カーリー神を奉り、大きな音を出しながら歌い、踊りながら行進してきます。
 


その中心には王の遺体がのった輿がかかげられ、大勢の兵に守られています。
そして、数々の宝石に飾られた目を見張るような美女が兵に連れられているのでした。
 

「あれはサッティーね。かわいそうに。」
 
ガイドの声とも取れないつぶやきを、フォッグ氏は聞き逃しませんでした。
 
「なんだね、それは。」
 
「いけにえのこと。王の妻は、王が死ねばその遺体と一緒に焼かれる。生きたまま。」


・・・さて、フォッグ氏の言葉は?