ドーバー行きの列車は20時45分、定刻通り出発しました。
「ご主人様、これからどのように行くのですか?」
「ドーバーからカレーに渡り、鉄道でフランス、イタリアを横断し、ブリンシジから蒸気船でボンベイまで行くのだよ。」
パスパルトゥーの故郷はフランス・パリ郊外の小さな街なのです。
でもきっと、故郷による時間なんてないだろうな、なにせ80日間で世界を一周するつもりなんだから・・・。
でもきっと、故郷による時間なんてないだろうな、なにせ80日間で世界を一周するつもりなんだから・・・。
ちょっと悲しくなるパスパルトゥー。
そんな彼の感傷はあまりにも慌ただしい旅のなかで、あっというまに消し去られてしまうのでした。
・・・ということで、もうここはスエズ。
1862年に開通したスエズ運河。
ブリンシジからボンベイへ向かう蒸気船は大量の石炭を燃料とするためにスエズでまた石炭を積み込まねばならないのです。
「ご主人様、停泊時間は4時間です。いかがなさいますか?」