「そのとおりだ」
ユダヤの商人に木の知識を認められ、すっかり欲しいものを手に入れたパスパルトゥー。
駅に帰る道すがら、そういえばご主人さまは象をどうするんだろう、と考えていました。
いよいよ出発です。
列車に乗り込む前に、ガイドに別れをつげるフォッグ氏。
当初に約束したとおりの金額を払い、そして言ったのです。
「あなたは約束した以上のことをしてくれた。その対価として、更にこの象も受け取ってほしい。」
思わぬ喜びに茫然とするガイドと、彼に寄り添う人懐こくもたくましい象、
フォッグ氏の采配にご満悦のパスパルトゥー。
・・・そんな彼らを煙をあげて汽車が引き離してゆきました。
列車のなかで目を覚ました女性アウダ。
すっかり異国の服を着て、みたこともない人に囲まれている驚きようは大変なものでした。
ただ、取り乱した中にも、品の良さと教養がにじみ出る、
心も美しいひとであるのは間違えようのない事実でした。
今まで起きたことの説明をうけ、安堵しながらも、もしまた見つかったら、
あの神殿の森で焼かれてしまうのではないか、と改めて震えるアウダ。
「インドにいたら、私はきっと捕まって殺されてしまいます。
香港にいる親戚のところまで、なんとかたどり着けないものでしょうか。」
フォッグ氏は言いました。
「貴女を香港までお送りいたします。ご安心ください。」