あたたかな灯りのもとへ

 
 
「なんだね?」
 
のっそり出てきた男をみて、パスパルトゥーはびっくり仰天!
それは故郷のなつかしい幼馴染でした。
 
「うわあ、お前、ここで何をしているんだい?」
 
「おおっ!お前こそ!俺はこの牧師様の館で下働きに使ってもらっているところさあ。」
 
2人は思わず時間を忘れて懐かしい故郷の話に花を咲かせました。
 
 

あっというまに時間は過ぎ、夜も更けてしまいました。
 
「うわあ、いけない!僕は牧師様にお願いがあるんだった」
 
「もう夜も遅い。また出直した方がいいよ。牧師様はきっともう寝てるだろうしなあ。」
 
「うん。わかった。じゃあ、また!」
 
 

・・・夜道をひたひたと帰るパスパルトゥー。
 
遅い時間ではありましたが、家々にはまだ明かりがともり、
暖かな室内を思わせる暖炉の煙があがっていました。
 
その頭のなかは、遅くなってしまったことの言い訳と、これから始まる貧乏だけど楽しいであろう生活のことでいっぱいでした。彼はどんな時でも(たとえお給金がもらえなくっても・・・ごはんさえ食べられれば)フォッグ氏についていこうと決めているのでした。
 
 

パスパルトゥーを迎えてくれる灯りが待つフォッグ氏の館はもうすぐ。

・・・・・こうして80日間世界一周は幕を閉じました。
 
この旅で彼が得た、どんな高額なものにも勝るもの。
それは皆さんもわかりますよね。
 

でも、もし何も得るものがなくても、それでも人は旅にでるものなのかもしれません。
 
 
The End