地球からの贈り物

 
 
中では牧師様が教会の道具の片づけをしていました。
 
「こんばんは。なにかお急ぎのご用事ですか?」
 
「あ、明日、結婚式を挙げてもらいたいのです!
あ、いえいえ、わ、私ではなく、ご主人様のです!」
 
牧師さんは彼の勢いに気おされながらも、ゆっくりと首を振りました。
 
「申し訳ないが、それは出来ません」
 
「えええっ!? なんで? 何故ですかっ?」
 
「明日は日曜日です。日曜のミサがあります。」
 
「・・・ああ、じゃあ仕方ありませんね・・・・って、今日がその日曜日じゃあないんですか?
今日は、今日は12月22日の日曜日じゃあないんですかっっ!」
 
 
牧師様は懐中時計を探りながら答えました。
 
「え?いえ、いえ、今日は12月21日の土曜日ですよ。
ちなみに時間は午後8時を過ぎています。ちょっと人を訪問するには遅い・・」
 
 
 
牧師様が時計から顔をあげたとき、そこには誰もいませんでした。
 
小屋からマリのように走り出してきたパスパルトゥーは
息もつかずにフォッグ氏の館まで走りに走りました。
 
 
「ご、ご主人様っ!ご、ご主人様っ!」
 
「どうしたね。牧師様に断られたのかい?」
 
「は、はい・・・い、いえ、そうですが、そうじゃあないんです!
明日が日曜だって!明日が日曜日だって!明日が日曜日だって!」
 
 

フォッグ氏は瞬時にその意味を悟りました。
そう、なんで気づかなかったのでしょう!
フォッグ氏たちは東回りで旅をしてきたので、日付変更線を横切り、
丸一日稼いでいたのでした!!!

パスパルトゥーが空腹と驚きと走りすぎで貧血をおこし、アウダに介抱されているころ、
フォッグ氏は彼のなかでは最高速の歩調でリフォーム・クラブに向かっていました。
 
 

・・・その頃、リフォームクラブでは、全ての会員がいずこともなく現れ、
ホールのグランド・ファーザー・クロックを固唾をのんで見守っていました。
 
 
「あと10分だぞ。もう来ないよ。」
「あの男はどうかわからないぞ」
「いやいや、やはり80日間なんて無理無理。今頃まだアメリカだよ。」
「アメリカどころか、まだインドで象にのってるかもしれないぞ」
 
 
「諸君!あと1分だ!」

グランド・ファーザー・クロックが午後8時45分のクオーター・ベルを鳴らそうと、
その振り子を揺らした時・・・!
 
 
 
 
大きく開いた扉の向こうに、フォッグ氏が悠然と現れたのでした!
 
・・・・・こうして80日間世界一周は幕を閉じました。
 
この旅で彼は莫大な財産を得ますが、それよりも、何にも増して得難いものも手に入れました。
 

それは皆さんもわかりますよね。
 
でも、もし何も得るものがなくても、それでも人は旅にでるものなのかもしれません。
 
さあ、貴方も、世界を廻る旅へ。
 

そして、それにも勝る時間を廻る旅はいかがでしょう。
 
時間を廻る旅のチケットは、日本の「西洋骨董 Pancada」で手に入るらしいですよ。
 
 
 
Congraturations!
You have got the Best Ending!