「よし、合格!船に乗ってくれ!なんとかしよう!」
「有難う。ついでといってはなんだが、男性の服を一揃い都合してもらえないだろうか。」
下着のままで小さくなっているパスパルトゥーを見ながら、フォッグ氏は頼んだのでした。
香港からヨコハマまで、頼りない小さな船での航海がはじまりました。
そして途中の嵐や様々な困難にも打ち勝ち、ついに日本の土を踏んだ三人。
当時の日本は、ヨーロッパから「太陽の国」といわれていました。
万博でみることのできる高品質な焼き物や織物。細かい細工。東の果て。
ヨーロッパからみた日本は、不思議で眩惑的な魅力にみちた、太陽が昇る国だったのです。
ヨーロッパからみた日本は、不思議で眩惑的な魅力にみちた、太陽が昇る国だったのです。
現実の日本は、1868年の明治維新以来、長かった太平の眠りから覚め、
近代化の波に洗われていました。
「江戸」から「東京」にかわったのもその頃。
そんな混乱のなかの日本に、彼らはやってきたのでした。
木や紙で出来た家。奇妙な構造をした神聖なる門、
竹や葦《あし》の中に半分隠れた橋、巨大な杉の木が影を落とす寺。
小さな足でちょこちょこあるく女性、木や草でできた靴。後ろで結んだ大きい紐。
好奇心でいっぱいの彼らは、レストランとおぼしきところで、食事をすることにしました。
食べたのは炊いた米と半身の鶏。
周りの人間が食べているところを、みぶりで注文してみたのです。
慣れない調味料に驚きながらも、それなりに美味しく食べたのですが・・・
長旅の疲れか、食べなれない味付けのせいか、アウダが急に腹痛を訴えたのです。
「医者か薬がいる。きちんと英語がわかる人間はいないのか。」
フォッグ氏の問いかけに答えるかのように、行く手に一軒の店が現れます。
看板には「西洋骨董 Pancada」
「”Pancada”・・・。パンカーダ。ポルトガルの言葉だ。英語もわかるかもしれん。入ってみよう。」
そこは不思議な空間でした。
英国の家具にフランスの燭台。
そしてヨーロッパのものだろうけれど、良くわからない古い鍋や陶器などが
無造作に積まれています。
奥からひっそりとひとりの男がでてきました。丁寧な英語でフォッグ氏が声をかけます。
「連れが腹痛をおこして困っています。助けてもらえませんか?」
男は流ちょうな英語で答えました。
「それはお困りでしょう。ただ、あたしもひとつ困っていることがある。この家具についている顔はなんなんでしょう?説明が出来ないと売るに売れない。英国のひとならわかるんじゃあないですかね?もし教えてくれたら、お連れのきれいな方に必要な薬を用立てましょう。」
さて、フォッグ氏の答えは?