彼の地で出逢う故郷の元首


無事に船長の葉巻を手に入れ、転んだ船長を介抱したパスパルトゥー。

「やあ、有難う。有難う。」

葉巻を手にひとごこちがついた様子の船長。

「お客様にぶつかっておきながら使いに走らせて申し訳けないことをしました。
お詫びに、情報をお教えしましょう。
香港では何事もお金次第。そして、香港人は英国人のいう事はきくが、フランス人は難しいことがあります。
あなたはフランスの方ですね?そして従者とお見受けしますが、
もしご主人が英国人ならば、彼の後ろに隠れて過ごすのがよろしいでしょう。」


そして船は香港に到着。
 

 
 
ここでアウダは親戚のところへ行き、フォッグ氏とパスパルトゥーは
旅を続けるために今度はヨコハマ行の船に乗りかえることになっていました。


1839年のアヘン戦争、そしてその後の南京条約により、香港は英国の植民地となっていました。

英国政府の積極的な貿易の推奨により、
街は様々な人種で溢れ、自由な、そして同時に猥雑な雰囲気が漂っていました。

フォッグ氏がそんな街を歩き回り、なんとかつかんだ情報によると、
アウダの親戚は既に香港をあとにし、オランダへ行ってしまっているらしい、
ということがわかりました。

フォッグ氏はなんの迷いもなく、アウダを連れて旅をつづけ、ヨーロッパまで送り届けることにしました。

いっぽうのパスパルトゥーは、フォッグ氏にことづかったお買いもの中。

ただ、なかなか思うようにすすみません。

いらだちながら、ある店でだされたお茶を飲んだところ、たいそうな眠気に襲われてしまいました。



 
ぐっすりと眠りこんでしまった彼は、数時間後、
なんと身ぐるみ剥がされた状態で道端で目を覚ましたのです。


「うわあっ!なんだこれは!おまけに出港の時間も過ぎてるじゃないか!」


かろうじて下着だけを着た、身一つで駆けだすパスパルトゥーの脳裏に、
ようやく先ほどの船長の助言が蘇ってくるのでした。

・・・が、時すでに遅し。

一行が乗るはずだった船は既に出港し、乗り場にはフォッグ氏とアウダの姿がありました。
そう、やはりフォッグ氏は彼をおいていくことはできなかったのです。


「ご主人様っ!なんと言ったらよいのでしょう・・・!」

「何もいわなくても様子でわかる。いや、きっと手立てはあるはずさ。」

涙目のパスパルトゥーをしり目に、落ち着いた様子のフォッグ氏。

なんとかすぐに出港できる船を探し出しましたが、ごく小さな船しかみつかりませんでした。

「なんとかこの船で日本まで行ってもらえないだろうか。」

うさん臭そうな目でフォッグ氏をみつめる船長。

「どうにも外国人は信用できねえな。」

「報酬ははずむ。英国は香港を支配してはいるが、経済発展を実現させているのではないか? 」

「あんたは英国人かい?同じ言葉をしゃべる他の国のやつもいるからなあ。
ひとつ試させてくれ。ここに5ポンド金貨がある。
英国人ならこの横顔が誰のものか答えられるはずだ。」