煙となって消えてゆきたい

 
 
家具の上にあった紙巻タバコのようなものをとって船長のもとへとってかえしたパスパルトゥー。
 
親切にも、火をつけて船長の口元まで持って行ってあげました。
 
「いやあ、有難う有難う」
 
船長はぼんやりしながら煙を吸い、よろよろと操舵室へ入っていきました。
 
 
 
そこへちょうど通りかかったフォッグ氏。
 
「なにか変なにおいがするな。・・・この臭いはマリファナじゃあないか?
お前、そんなものをやっているのかい?」
 
「いえいえ、私ではなく・・・えっ!マリファナ!?」
 
「ああ、あれは気分良く過ごせるらしいが、集中力なくなるからねえ。
まあ、やめた方がいい。特に乗り物の操作をするときとかはもってのほかだね。」
 
「ま、まずいっ!」
 
慌てたパスパルトゥーが操舵室に向かおうとした途端!
船は大きな音を立てて岩礁にぶつかってしまいました。
 
 
 

なんとか沈没は免れましたが、他の船に救出してもらうまでの数日、
太平洋に置き去りにされた乗客・乗員。
 
すっかりしょげかえったパスパルトゥーと、さらに無口になったフォッグ氏ももちろん
そのなかにおりました。
 
当然間に合わなくなった80日間世界一周をあきらめたフォッグ氏とパスパルトゥーは、
次の香港でガイドとなって余生をおくったということです。
 
 
The End