ナツメヤシの林で茫然と



無事にインドへ入った2人。
 
当時インドの中の英国領は約70万平方マイル。人口は約1億程度でした。
 
1756年、英国が現在のマドラス市にあたる場所に最初の足がかりを得たときから、
世に名高い東インド会社はインドを絶対的に支配していました。
 
しかし、その支配も、1857-58年のセポイの乱(インド大反乱)によって終わりを告げ、
インド統治権を英国政府に譲渡、やがて解散となっていくのです。
 
世界の様相は、風習や人種上の区分も同様ですが、日々変化しているのでありました。
それは交通も同じこと。
 
かつてインドでは、旅行する際には、歩き・馬・馬車といった、旧態依然の方法しかありませんでした。
 

それが1870年代ではすでに速く進む蒸気船が、インダス川やガンジス川で働いていますし、
多くの支線がある鉄道も整備されていました。
 
これによって、インド半島をボンベイからカルカッタまで、
3日間で横切ることができるようになったのです。
 

・・・少なくとも、英国の新聞によれば。
 
 
フォッグ氏とパスパルトゥーもこの鉄道に乗って、まさに20時ちょうどにカルカッタへ出発したのでした。
 
 
順調に見えたこの鉄道の旅、途中で思わぬ障害がおきます。
朝の8時、列車は急にナツメヤシが茂る村の空き地で停車しました。
 

「乗客はここで降りてください!ここから先50マイルは線路がまだできていません~!」
 
 
新聞の情報は常に前倒し・・・・。
 

気づいた時にはすでに遅いのでした。
 
村の交通手段はすでに他の乗客へとられてしまったようです。

全く出遅れてしまったフォッグ氏とパスパルトゥー。

ふとこちらを見ている村人と目があいました。
 
 
 
「あんたたち、次の鉄道の駅までの足を探しているね?」
 
「ああ、そうだとも。きみはなにか手段を提示してくれるのかね?」
 
「実は前に馬を貸した英国人が、価値があるというガラスをおいていったんだよ。
でも、どこがいいんだかさっぱりわかんねえ。もし教えてくれたら、なんとかしてやらんでもねえ。」